イエモン・9999 フォーナイン
はじめに
全曲聴いてみて、曲順が良いと感じた。既に発表されていた曲、初発表曲を交互にいれている。一曲目が初発表曲だったのが良い。初発表曲はどれも難解だけど、これが、これこそが、このバンドの良さだと僕は思っている。
歌詞の奥深さと濃厚なサウンド。
これぞTHEYELLOWMONKEY。
オリジナルアルバムの発売は実に19年ぶり。ウイスキーのように寝かせることで味わい深くなり、骨董品のように価値を増していく、THE YELLOWMONKEYはそんなバンドである。
2016年の再結成以降、ALRIGHT、砂の塔、ロザーナと曲を発表していく中で、昔と何か違うような、そんな違和感を2017年前半の僕は感じていた。その後、新曲Horizon、2017年12月の東京ドームLIVEに赴きロザーナを聴いたことで、僕は気づきを得た。違和感が何であったか、そして再結成後のTHEYELLOWMONKEYとは何かが、自分の中で明らかになったのだ。今回のアルバム「9999」を聴いたことで、それは確固たるものとなった。そちらについては記事の一番最後に書くことにして、まずは今作の中で自分が特に気に入った曲を二つ挙げ、感想を書き記したい。
この恋のかけら
激しすぎず、切なさを孕みながらも美しい一曲。歌詞に出てくる季節は「冬になる直前」から「春になる直前の冬」だと思う。2001年から2016年まで眠っていたTHEYELLOWMONKEYの境遇とマッチしている。歌詞にでてくる「この恋のかけら」というキーワードがとっても良い。
この恋のかけら どこに埋めればいいのだろう
時が去っても抜けないでいる、長い足跡に滴り落ちる、「この恋のかけら」はファンに対してのものであり、吉井さんらメンバーがバンドに対して想っているものでもあると感じられる。バンドが結成されてから今までの間に募った気持ちを仕舞っておくには、なんだか寂しい。吉井さんはそんな気持ちを歌詞の何パーセントかには込めたのではないだろうか。
細かく歌詞に注目すると、
・灰色のロードムービー
・いつもの死神
・強い酒、悪い薬
など、今回のアルバム以前の新曲にはなかったフレーズが出てくる。これらの雰囲気と似た言葉が他に収録されたアルバム曲にも登場する。今作のアルバム発売までにリリースされた曲では、イエモン初期の危うさを100%出すことができずに、抑えざるをえないのだろうなぁ という感じがしていた。しかし、アルバムを手にして、一曲目である「この恋のかけら」を初めて聴いたとき「あぁ、やっぱりイエモンはイエモンだし、このアルバムは前作8の続きなのだ、、」という安堵感が得られた。
balloon ballon
一番好きな曲。最高。もう毎日聴いている。追憶のマーメイドのような馴染みやすい歌謡曲のようなサウンドであり軽快でもあるが、ちゃんと聴くと、かなりの危うさを秘めている。この曲が何を歌っているのか、解釈は聞き手に左右されるだろう。僕の解釈としては、アレだろうな 「この恋のかけら」に出てきた「悪い薬」だし、狭いベッドの列車で「天国旅行」に行くためのモノだろうな。そんなことを僕は勝手に思っている。
過去も未来も今だけになる
後戻りなどできないほど 飲み込まれていく スプーン一杯の愛
スプーン一杯の愛の類語として、名曲「楽園」では、スプーン一杯分の幸せという言葉が出てきますが、解釈は同じで良いはず。
秘密の鍵をひねってしまえば
この世界は僕たちだけのもの
危ういけど、かっこいいんだよなぁぁぁぁぁぁぁぁ 僕は危うい行為が好きなのではないです。決して。THEYELLOWMONKEYだけが出せる、危うい雰囲気が大好きなのです。わかるかなぁぁぁぁぁ!!! あぁぁぁい!!
最後に
9999は間違いなく8の続編。THEYELLOWMONKEYは昔から根底にあるものは変わらずに進化していっている。
2016年の再結成後2017年前半まで僕が感じていた違和感について。ALRIGHTは初期のイエモンを感じられたが、次の砂の塔はドラマに合わせすぎだと思ったし、ロザーナはなんだか明るすぎると初めて聴いた時はモヤモヤした。違和感を感じている間、僕は昔そのままの雰囲気やサウンドをTHEYELLOWMONKEYに求めていたのだ。しかし、今は違う。活動休止を経て年を重ねてメンバーは深みを増したのだと納得している。メンバーは大人になったのだ。だから砂の塔のようにドラマの雰囲気にあった曲をしっかり作れるんだ。あと、書き方は悪いが、50歳になって昔の自暴自棄のような感じを出しても。。と思うし、人生が後半にさしかかった人が絶望や孤独をずっと感じていたら嫌だなとも思う。感じること、抱えること自体は良いことで、それを人生後半で過剰に感じていたら嫌だ という話。
年を重ね、様々経験も重ね、幸せも感じられ、
そして吉井さんはHorizonを唄うことができた。
東京ドームでライヴ初披露となったロザーナは、皆ほかの曲よりも染み染みと聴き入っているようであった。
走りだしたら 次のゲームを始めよう
そう歌った2017年。
そしてアルバムを作り上げた2019年。
僕は、祝福の乾杯をあげたい。
深みを増したけど、根底は変わっていない、僕たちが聴きたい曲作り届けてくれる、メンバーたちへ。
究極のアルバム・9999を作ってくれて、ありがとう。
THE YELLOW MONKEY - I don't know